医療機器業界の転職ノウハウ

5.新薬事法関連の転職作戦

1 解説 全般・薬事法改正のインパクト

1-1 解説

2005年4月に改正薬事法が施行されました。すでに3年近く経過しているのです、医療機器転職市場へのインパクトは、薬事申請・臨床治験職などは現在も 進行中といえます。2008年の状況を見かえりながら、2009年度(平成21年)の薬事関連の仕事の転職事情を予想します。

改正薬事法の趣旨とその転職市場への影響は:

1 業許可のあり方が厳正になった。輸入業としての位置づけが「製造販売業」として格上げされ、安全性を確保する義務が生じた。

2 品質システムとしてISO導入が義務付けられ(13485)、薬事申請で体制整備が条件になっている。総括製造販売責任者、GQP・GVP責任者(薬事3役)の任命が必要となる。
また業許可の更新にあたっては、過去の薬事申請の書式も改めて検分をうける。内容のチェックが必要となる。

3 役職として2の3役のほか、申請・臨床治験などではより高度な経験知識・コミュニケーション力が必要になってきている。

1-2 組織・体制は完了

需要は広がりつつも、要求する経験などが専門・高度化している。また輸入業から製造販売業への移行で、海外製造拠点の品質にも責任が生じるので、英語によ るコミュニケーション機会が増えている。英語力も要求されてきている(特にマネージャークラス)。資格・経験が一定レベル、さらに英語力も吟味される「狭 き門」の状態。この構造は2009年にも引き続いています。

実行力ある若手に需要

2009年での概況は以下に

1 改正薬事法対策(体制・人材)作りは完了している。ただ手足となって実務をこなす若手の募集が増える
2 申請では記述内容がより専門化している、薬学・化学・機械工学・材料工学などの知識バックグラウンドを持つ方有利
3 各社補充・体制の強化は課題、通年応募が可能(公開情報がなくても応募できる) 

2009年の予測は:

薬事フィーバーはおさまりつつ、補充強化で底固い需要

と予測します。

2 求人スペックの分析 薬事申請

募集職種 ①薬事申請

仕事内容は医療機器の販売許可を厚生労働省に申請する書類の作成。製品の効能効果、安全性、外観概要、構造などを記述する。医療過誤を未然に防ぐために、許可基準が厳格化している中、申請書式にも専門性が求められます。

求人スペックの中で重視される資格等は(重視される順番で)

募集職種

1 経験・実績
2 専門性(製品知識+教育バックグラウンド)
3 交渉力(社内・対申請機関・英語力)

となります。1-2-3を細かく見ると:

経験

1 経験とは、申請までの一連の仕事の経験、すなわち資料を取りまとめて医療機器総合機構(独立行政法人)第3者認定機関などに書類の提出・承認まで持ち 込む。 一回だけ書類を完成完了させただけでなく、いくつかの一部変更・承継などの書式も取りまとめ、申請提出し窓口との交渉でも機敏に応対できたーなど も含まれます。手に入りにくい英文の原資料を手に入れる交渉の経験を評価されます。

専門性

この一連の作業は、会社(メーカー)の中では専門性の高い独特の仕事となります。営業・マーケティングとは異なり、個人ベースで知識・経験の積み重ね、会 社としての専門教育・トレーニングを確保することが難しい。薬事申請だけは「社内のトレーニングで人材開発できない」ー経験者が優先されます。
2008年の流れを見ると、各社経験者を募集していました。しかし経験者だけで人員を確保するのが困難な状況も。そこで基準をゆるめています。若手であれば薬学化学・機械電子工学出身、文化系でも英語力と文章構成力が優れれば採用に至ります。

改正薬事法以来の難しさ

2 薬事法改正に伴って、申請書類の品質向上が要求されている。これまではいわば製造(開発)側にある資料の取りまとめが多く、申請担当者があらたに一次資料から作成することは少なかった。

改正薬事法以来、記述内容の厳格性、特に安全性に対する担保の「学術的裏付け」、人体に接する部分の材質の、単なる名称ではなく正確な記述などがチェックされている。
こうした資料を製造にさかのぼって確認するというこれまでになかった工数が発生しています。
申請書類にまとめる段階で、どこまで原資料を取り込むのかという判断、それを製造側(特に海外)に理解させられるコミュニケーション力が必要です。英語が他部門以上に重要になっています。

3 社内社外交渉力も重要となってきました。薬事申請の場合は社内・対機関(役所)と多様なので、柔軟性ある交渉姿勢の持ち主が優遇されます。

3 総括責任 GQP/GVP 臨床開発・治験

募集職種 ②総括製造販売責任者

業許可の申請責任者です。社長に直接リポートになる職位で、多くの企業が現職者の社内転用を考えています。

新たに外部から採用する動きとして:

1 医療機器分野に進出をすすめる参入企業
2 製造業から製造販売業に移行する計画
3 資格者の補充・代替

募集職種 ③品質保証責任者(GQP)

れまでもGMPIでは品質保証基準があり、出荷可否の判定と回収の規定がありました。今回異なるのは(輸入品の)保障ラベル貼りの工程が「製造工程」となります。それだけに安全保障基準の策定、可否判断の根拠に技術的整合性=専門性が求められます。

開発・企画・品質管理など広く経験し、再就職を狙うシニア層にも十分チャンスがあります

市販後安全管理責任者(GVP)

これまでのPMS(市販後調査)と異なるのが、販売部門からの独立、安全性確保、適性使用調査など管理項目をV(Vigilance=徹夜の警戒)として 運営する義務が課せられました。管理項目が増え新たな職位となりました。PMSが近似ですがマーケティング、学術職からも応用が利きます。

臨床開発(治験)責任者

高度管理医療機器(クラス3,4)で新しい技術を含む製品に対して国内での臨床治験で安全性・効能を証明することが法制化されています。体内留置する治療 器具が中心です。臨床治験はGCP(GoodClinicalPractice)の基準に沿って計画を立てます。その一連の作業(StandardOperationProcedure作製、プロトコルの 特定、QC、総括報告など)を監理する責任者。GCP自体が2005年に大幅変更(新GCPへ)です。医療機器で新GCPでプロジェクトを立ち上げ、 完了したのはまだ少ない。その分経験者が少ない。
多くが海外臨床とへ移行して進めるので、英語コミュニケーション力を求められる。

GPSP(=GoodPost-MarketingStudyPractice) 製造販売後の調査及び試験
新しい仕事内容です。2007年に求人が発生しましたが、今後増大すると予想されます。

4 5つの成功例 要約

過去メディカルキャリアでの転職成功例から下記の5例を取り上げました。
(仮名です、部分的に内容変更しています)

即戦力(経験者が圧倒的に有利)
下表で No.1、3、5 で顕著  No.4は経験年数は1年、しかし年齢と英語力がカバーして採用。

仕事の全体を把握し効率的に仕事してるか(専門性・質の高い仕事の判断材料になる)
No.1、2、3、5で顕著

コミュニケーション力、特に英語はNo.1、2、4、5
で評価されています。

No. 仮名 希望職種 特徴・強い点 判定1 判定2
Yさん
(35歳女性)
薬事申請 経歴(6年)
申請作業の全体を把握
製造側と積極的に交渉する
書類の起稿から資料の取り寄せ、申請までの実績に評価
申請の点数から申請業務に熟達していると判断されていた
英語堪能とまで行きませんが、勉強している熱意は高得点
Tさん
(39歳女性)
薬事・臨床 製薬での薬事・臨床経験 安定感
指導力があり、薬事および臨床開発のプロジェクトで力を発揮
新GCPの知識
英語力あり
YGさん
(49歳男性)
総括責任 医療機器メーカーで20年の経歴。製造・品質保証など歴任 年齢相応の経歴
総括責任者の資格
他候補者が出てこない、急募である
Iさん
(29歳男性)
品質保障 医療機器小規模メーカーでQA1年の実務 ISO導入のリーダー
柔軟性がありそう
年齢・英語力

YMさん
(36歳 男性)
GQP責任 前職企業は部門縮小で、早期退職に応募 急務の品質プロセスの建て直しで即戦力が期待
リーダーシップ
英語力(海外オーディット可能)

結論:
転職成功の秘訣
1 経験(即戦力期待)、実際に申請文書を起草完了して、提出、問い合わせ対応、承認
2 性格としては「論理的思考」「地道に仕事を進める」「コミュニケーション力」